合体 

芥子(けし)畑に実は熟れにつつ我は未だ快楽(けらく)と呼ばむ貪りを知らず
(蒔田 さくら子)

芥子は可憐で繊細な花だ。そして雅やかな花だ。細い茎を揺らして風になびくさまは、はかなげな美しさを漂わせつつ、か細い首を傾(かし)げる女性の姿を想起させる。
花の時期を過ぎると丸く青々とした実をつける。
その表皮に傷を付けると乳白色の液体が流れ落ちる・・・これが阿片(アヘン)だ。
性愛には、麻薬に通じるものがあるのかもしれない。
陶酔・恍惚・法悦・・・その感覚に魅了されたら最後、抜け出すことは至難の業だ。
余程強い理性を保たなければ、絶えず自らを醒めた目で見つつ、制御していかなければ、たちまちに耽溺に陥ってしまうほど強烈な快楽をもたらすものだ。
わたしは、まだ麻薬のような性愛を知らない。
しかし知りたいと希求する。
身体が溶けてしまう程の魂の一体感を彼と味わい、我を忘れる程の快感に酔いしれてみたい。互いの心も身体も貪り尽くしたい。性愛に溺れてみたい。
愛する彼と貪るように求め合う日がいずれ訪れるであろうことを、わたしは予感していた。


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彼女は、どうしても彼の大切な部分を愛撫したいという気持ちの昂ぶりを感じ、彼のズボンに手をかけた。彼は天井を見詰めたまま横になっていて、微動だにしなかった。
目を閉じ加減にしていたかもしれない。
ジッパーを下ろすと、下着には膨らみを帯びた男性自身のシルエットが浮かび上がっていた。彼女はそれを愛しげに見つめ、ゆっくりと撫でてから、下着をおろし、彼の一物を小さな手でおそるおそる握った。
初めて彼自身を目で確かめ、手でその感触を確かめた。それは掌の中で熱く脈打っていた。
「もう10年もしてないの。やり方を忘れてしまったわ。教えてね」と恥じらいを見せつつ、彼の大きく猛った男根を口に咥えた。
口いっぱいに頬張ると、舌先でチロチロと小刻みに刺激を加えたり、舌の腹で根元から先の方まで丁寧に舐め上げたりした。そして一番敏感な部分には執拗に舌を這わせ、唇で軽く吸い上げたりもした。最後に、咥え込んだまま顔を上下させ、唇と舌と口蓋を総動員して刺激を与え続けた。
「うぅ・・・ん」
彼は目を瞑っていた。その表情は押し寄せる快感の波に、自らを預けようとしているように見えた。
こうしてしばらく彼女は自分のアレを愛撫してくれるつもりなのだろうか・・・と夢うつつに考えていると、突然彼女が身体から口と手を離した。
訝しく思い目を開けると、何と彼女が腹の上に跨(またが)ろうとしているではないか。
「あ、ちょっと!・・・ダメだよ・・・」

彼女を書斎に招き入れたのは、他ならぬ彼自身である。しかし、そこで関係を結ぶつもりは全くなかった。いつも以上に互いのぬくもりを感じられればそれで充分だった。確かに「愛している」と彼女に告げたし、前々から「抱いてください」と懇願してくる彼女の気持ちも痛いほどわかっていた。だが、まだ踏ん切りがつかなかったのである。新たな一歩を踏み出すまでの逡巡の中で、彼は「その場足踏み」を続けている状態だった。
かつて彼女は「抱いてもらえたら、もっと強くなれる」とも語った。しかし、彼には全く理解できなかった。
それどころか逆の考えしか浮かばなかった。
彼はこれまでの人生で、セックスによって力を与えられるとか、愛の歓びを与えられるとかいう経験をしてこなかったのだ。若い頃から抱いてきた「理想のセックス」「セックスへの幻想」は見事に裏切られ、現実のセックスなんてこんなものだと失望した。・・・諦念と虚しさしか残らなかった。だから彼女とのセックスに関しても何も期待するものがなかったし、極めて消極的だった。実際、40半ばにしてセックスへの興味は薄れつつあった。休火山状態に近づいていた。そんな折である、彼女と25年ぶりに再会し、愛し合うようになったのは。

挿入しなければ、セックスをしたことにはならない。挿入さえ避けて互いを愛撫するだけならいいだろう。彼はそう考えていた。今でこそ、ふたりの性愛は、互いの身体に触れ合うところから始まる、と考えているが、この時は違った。挿入さえしなければ「肉体関係」を持ったことにはならないのだ、という妙な安心感があった。それなのに、彼女は・・・。

「あ!・・・ダメ、ダメだよ」
言葉で優しく制止しても、彼女は止めなかった。彼の一物を握り、彼女の秘園にあてがうと、腰をぐいと沈めたのである。あっという間の出来事だった。彼は唖然とした。
彼女のそこは、既にしどけなく濡れていたので、すんなりと彼自身を迎え入れることができた。 口では「ダメだよ」と言いながら、彼は決して力づくで止めさせようとはしなかった。彼女を突き飛ばすことはしなかった。何が何でもセックスをしたくない・・・そこまで強固な気持ちはなかったからである。
自分の気持ちは決まっている、彼女を愛するという気持ちが揺るがないこともわかっている。どのみち、1年のうちに1回は必ず抱くと約束した。それが今日になったと思えばよいだけの話だ。いずれ、きちんと抱くつもりではあるし、今日のことは不本意であるが、事実として、彼の男根は彼女の花芯を貫き、秘園に埋もれてしまっているのである。

彼は覚悟を決めた。もう引き返せない・・・。
目を閉じて、彼女の血汐の熱さを、肉の柔らかさを感じようという気持ちになった。
彼女は彼の上で、まるで風になびく柳の木のように、しなやかに身体をうねらせ、腰をくねらせた。
男根が彼女を突き上げる度、小動物がすすり泣くような可憐な声を上げた。
「あぁ・・・あぁん・・・」
彼は、彼女が感じてくれているのが分かって、とても嬉しかった。彼女への愛しさが募ってくるのを覚えた。彼自身も快楽の波の高まりを徐々に感じ始めた。彼女の気持ちを受け取り、今度は自分が彼女の身体を愛そう・・・自分が上になって彼女を抱こう・・・そう思った矢先のことだった。
また彼女は、突然彼から身体を離した。
今度はどうしたのだろう・・・と案ずる間もなく、彼女はひらりと彼に背中を向けた。膝を床につけ、四つん這いの姿勢になると、彼の前にほの白い尻を突き出した。艶(なまめ)かしい声が彼の耳を撫でた。
「ねぇ・・・後ろから、して・・・」
あれよあれよと言う間の出来事だった。あまりの展開の早さに彼は戸惑ったが、彼女の臀部をぐいと掴むと、 背後から、深紅の果肉を覗かせた熟れた「無花果(いちじく)」のごとき女芯に一物をぶちこんだ。腰をさらに引き寄せると、彼女の肉襞の中へ男根を根元まで一気に埋め込んだ。
彼が抜き差しするたびに、ふたりの肉の擦れあう音が、混ざり合う体液の隠微な音が、静寂に響き渡った。
(そういえば、この部屋は道路に面しているので声を出さないようにと彼に言われていたのだった)声を押し殺そうと口をきつく結び、歯を食いしばってはみるのだが、官能の息が漏れるのを抑えることはできなかった。 鼻にかかった甘い喘ぎ声が細く長く響いた。
「はぁ・・・ん、んん〜・・・あぁ・・・あぁん・・・」
彼も興奮と快感に酔いしれていたが、かろうじて冷静さは保っていた。
避妊していない・・・妊娠が心配だ・・・。
「今日は最後まではしないよ」
その声で彼女は我に返った。
「はい」
そうして、ふたりはゆっくりと身体を離したのだった。

彼はこれまで、女性は性的に受身であり、あまり自分から欲望を訴えないものだと思ってきたし、女性の中に性欲の昂ぶりが存在することすら信じがたい事だと感じてきた。
だから彼女が自分から「抱いてください」と訴えたり、「あなたを想って触っているの」「キスしているだけで感じてしまったわ」と話したりすることに、まず驚いた。自分の女性観がガラリと変わってしまった訳だ。
彼女は彼女で、相手が彼だからこそ、自分の正直な気持ちを包み隠さず話すことができるのだった。
それは以前にも書いたが、彼なら自分の総てを受け入れてくれるだろう、という強く確かな直感が働いたからに他ならない。彼の総てを信じ、自分の総てを預けていた。無防備なほどに・・・。
そして、この日彼は、再び驚きの目で彼女を見るようになったのだ。驚きと共に何か齟齬(そご)を感じた。その正体を彼はまだ自覚してはいなかったが、実は、彼女の動きが余りにも性急だったことにある。彼女は何かを急いでいるように、何かを焦っているように、めまぐるしく動き続けた。彼女が「不幸なジャンクセックス」しか経験してこなかったこと、「セックスとは自分が感じるものではなく男をイカせるもの」という誤った思い込みをしてきたこと、が原因なのだが、この時点では全く彼のあずかり知らぬことだった。
彼には(10年以上もそういう関係がなかったから、貪るように求めたのかもしれない・・・)という程度の想像しかできなかった。


ああ。ごめんなさい、みなさん。ひよどりって、こういう女だったのです
自分でも彼と出逢うまで気付きませんでした。彼と別々の人生を歩んできた25年の間、私にとってセックスは決して楽しいものではありませんでした。昔の記事に詳しく書きましたので、興味のある方は読んでみて下さいね。要するに彼も私も、現実のセックスには失望していたのです。 そんなふたりが、こういう関係になり・・・どういうふうになっていくのか・・・。 官能的な性愛描写をとり入れながらも、本末転倒にならぬよう気をつけて、お上品な記事を書き続けていきますので(笑)どうか、ついてきて下さいませね
お素敵な皆さま、是非とも応援のポチをお願い致します。
(*・ω・)*_ _))ペコリン

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ういんく
今日もお読み下さってありがとうございます♪


Comments

官能小説家のひよどり先生へ

きゃぁー!! ひよどりちゃんったら、我慢しきれずに彼を襲っちゃったのね?! 自分から四つん這いになって「後ろから犯してぇ〜」ってお尻ふっちゃったりもしたのね。凄すぎるわ〜。夕子も顔負けの赤裸々告白だわ。彼も思いがけぬ展開とあなたの大胆さに相当戸惑った思うわ。じゃあ、今でもひよどりちゃんペースで楽しんでいるのかしら。それにひよどりちゃんはもともと文章がお上手だ思っていたけど、性愛描写には一段と力がはいっているわね。緻密で、真に迫っていて、すっごく興奮しちゃったわよ。これからは官能小説家のひよどり先生と呼ばせていただこうかしら?

夕子さん・・・こんばんは。いつも過激お素敵感激コメントをありがとうございますv-237「襲っちゃったのね」だなんて、人聞きが悪いこと仰らないでください(笑)それに続く内容には誤りがあります。「後ろから犯してぇ〜」ではなく「後ろから、して」です。お尻を振ってはおりませんe-446 そこ、勘違いなさらないようにお願い致しますね、うふふ。

ご推察の通り、彼は大変に戸惑っておりました。私の動きが性急だった理由も、後にすべて納得してくれましたが、最初がこれじゃあ、誰だってドびっくりぃ〜ですよね。
現在では、ひよどり、飼いならされた猫のごとく大人しいもんです。たっぷり可愛がってもらっていますe-328

陳腐な官能表現に走らぬよう気をつけながら、この先も書き続けて・・・と、その前にこのブログは、エロブログではありませんからっ!あくまでもテーマは「魂の再生」です。ボロボロだった私が、彼によって本来の自分に戻れた、ということですね。精神的な愛が深まり絆が強くなる程に、また本来の自分自身に戻っていくにつれて、彼との性愛も深く激しく「進化」していったということを書きたいのだけど、難しいですね・・・。夕子さんの才能を分けて欲しいわe-468

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